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商品先物取引(しょうひんさきものとりひき)は、農産物や鉱工業材料等の商品を将来の一定日時に一定の価格で売買することを現時点で約束する取引であり、先物取引の一種である。中には現物取引に含まれる「先渡し契約」を伴うものもある(その際には期日までに指定倉庫に現物を用意する)。
本来は、将来の価格変動リスクを管理するための手段(リスクヘッジ)として利用するものであるが、日本では、投機手段としての利用が多くなっている。
主な役割として、価格変動のヘッジ機能と商品価格の調整機能がある。
ヘッジとは、商品の現物取引を行っている者が、将来の価格変動によって損失を被らないように保険を掛ける機能である。具体的には、アルミニウムを10,000トン輸入した商社があり、船で輸送して日本に到着するまでに1箇月かかるとする。仮に1箇月の間にアルミニウムの価格が1kgあたり10円下がったとすると、商社は1億円の損失を出すことになる。このような場合、商品先物取引を利用して10,000 トン分のアルミニウムを売っておけば値下がりによって利益が出るので、現物の損失と相殺することが出来る。値上がりの場合は利益を放棄することとなるが、商社の利益は買い付けの時点で利益を確定させ、価格変動の激しい相場商品を安全に取引することにある。 海外メーカーが商品先物取引所を活用して価格ヘッジを行い始めるのに対し、日本のメーカーの大半は商品先物取引所を活用せずに原材料の価格高騰を顧客に転嫁している。(顧客に価格上昇をヘッジしている) 製品メーカーは商品先物取引所で価格をヘッジしていないと、原材料価格が上がるたびに顧客に製品価格の値上げを申し込まねばならないが、価格をヘッジしているとヘッジした分については、そうした営業は必要なくなる。なぜなら商品先物取引所で価格をヘッジしているから、原材料価格が上昇すれば、商品先物取引所の取引でその分だけの利益が出るので、原料価格を気にする必要は無いためである。そして、一定の加工賃だけ常に落ちる仕組みが確立されることになり経営は安定する。日本では一部の航空会社、ガソリンスタンド、非鉄金属会社など以外は殆どの企業がヘッジをしていないのが実情である。また、このような事情により、ヘッジしていない企業は、経営が安定しない傾向にある。 例えば、運送会社において、燃料価格が上がったので、運賃を値上げを顧客に申し入れしても顧客は、なかなかそれに応じないため、経営を圧迫していくことになるためである。
価格調整機能とは、商品先物取引では、公開の市場で多数の参加者が競り合うことで価格が決定されるので、理論上、その時点での最も公正な価格が決められることを指す。また、先物価格を指標として生産者が生産調整を行うことがあるため、将来価格が高い場合は、生産量が増えて結果的に価格が下がり、将来価格が低い場合は、逆の現象が生じる。このため、商品価格の乱高下が減り、価格の安定化をもたらすと考えられている。ただし、仕手やファンド等の介入で価格が、ある程度乱高下する場合もある。銀相場におけるハント兄弟の買い占めが世界的な事象として知られているが、結局、彼らは暴落で大損失を被ることになる。
商品先物取引を金融商品として見た場合、少額の現金のみで取引できる「証拠金取引」であるため、レバレッジ効果によって利益・損失とともに莫大になりやすい。
1730年に江戸幕府が、大阪堂島米会所に対し米の先物取引を許可したのが、日本での商品先物取引の始まりである(今で言う先渡し契約を伴わない、先物取引でのデリバティブ取引の一種)。これ以前にも、1568年に開設されたロンドン(イギリス)の取引所や1531年に開設されたアントウェルペン(ベルギー)の取引所があったが、これらの取引所で行われていたのはあくまで現物取引の先渡取引であって、先渡し契約の無い近代的な商品先物取引の嚆矢は上記の堂島米会所といわれている。当時は現物の米の代わりとして売買契約数を記した書付けを帳合米取引の会所に持ち合って交換し、期日に突き合せて決済していた。現在でも先物取引の契約数を「枚」と呼ぶなどその名残が残っている。
堂島米会所は、米を取引対象としていたので、当然、商品(現物取引)市場であるが、当時の日本で米は貨幣的な役割を果たしていたこと、金本位制と銀本位制が混在していたことから、米を仲立ちとして金と銀の交換レートが実質的に決定されるという役割も持っていた。このことから、商品としての米よりも流通貨幣としての米の側面が強く、実質的には商品市場というよりも為替(金融取引)市場として機能していたと分析する研究者もいる。
しかし、米の先物取引は第二次世界大戦に伴う米流通の統制に伴い1939年廃止された。終戦後の商品取引所公布を受け、1950年大阪化学繊維取引所(現在の中部大阪商品取引所)を皮切りに商品先物取引が再開されたものの、国の農業政策として米の価格統制が行われたため米の先物取引は2008年12月時点でいまだ実現していない。
日本において商品先物取引に参加する場合、商品取引所の会員(株式会社形式の取引所の場合は取引参加者)となるか、取引を媒介する商品取引員の受託を受ける必要がある。日本独自の制度ともいえる商品取引員だが、その営業形態に起因する勧誘にまつわるトラブルが以前は多数報告された。現在は法改正により相当に改善されている(後述)が、これが一般大衆に「商品先物取引は危険」との認識を抱かせる一因となったとされる。
日本の商品先物市場は、農林水産省及び経済産業省の管轄となっている。これは、先物取引の内の商品の受け渡しに注目した管轄の方法であり、商品先物取引委員会(w:Commodity Futures Trading Commission, CFTC)という専門組織があるアメリカ合衆国をはじめとする諸外国と異なる点であり、また管轄省庁が2箇所あることに起因する運営上の諸問題も発生している。
日本は、他の先進国と違い商社などの機関投資家や、ヘッジ目的の実需家の参加よりも個人投資家による投機取引の方が大半を占めるほか、市場機能も未熟であると指摘されている。また、商品先物取引は商品取引員(以下 取引員)に預託した資金の限度一杯に売買する事は危険であり、これは「必敗の法」、「丁半博打と同じ」とされる。以前は、手当たり次第に新規顧客を開拓し、それらに無理な売買を勧め、金銭的破綻に追い込む「客殺し」と呼ばれる取引員が多数存在していた。そのため投資家とのトラブルが後を絶たず、相談や苦情が監督官庁に多数寄せられていた。これらを重くみた経済産業省などは、勧誘規制や商取会社の破綻への備えの強化策などを盛り込んだ、改正商品取引所法を2006年4月に施行し、投資家保護の姿勢を鮮明にした。この法改正以降は、寄せられる苦情件数は大きく減ったが、同時に取組高・出来高の減少や、取引員の撤退が相次ぎ、市場全体が縮小傾向に向かうといった負の作用も及ぼした。さらに、商品取引所においても、出来高減少により、商品取引所にとって手振り板寄せ取引よりコストがかなりかかるシステム取引のコスト負担が経営を著しく圧迫している。しかし同省は、同市場が他の先進国に肩を並べる前の過渡期であるとし、更なる健全な発展を目指し、あらたな商取法改正法案を国会に提出した。同案は2009年7月3日に衆参両院を通過し、1年以内の施行を目指している[1]。また、2010年2月には東京工業品取引所(TOCOM)の活性化を主目的とした「2010年にグローバルな工業品先物市場を実現する10のアクション[2]」を発表し、商品先物市場の発展に力を注ぐ姿勢を鮮明にしている。
TOCOMは1999 年にガソリン、灯油の石油製品を上場させた。その後、TOCOMの石油市場の価格透明性や市場としての利便性が高まったとして、2007年からは新日本石油が同取引所への会員加入を決める[3]と、他の石油元売も続々と参入を表明し、現在は大手6社全てがリスクヘッジなどに同市場を利用しているほか、仕切価格改定時の価格指標の一つとして採用するなど、当業者の参加は増加傾向にあり、欧米市場に近づきつつある[4]。また、白金、ゴムなどは国際指標の一つとされる。
2010年には中部大阪商品取引所から引き継いでザラバ取引となって中京ガソリンと中京灯油の取引が開始されたが、出来高については中部大阪取引所時代のガソリンと灯油と比較して激減している。
また、「初期の投資額以上の損失が発生する可能性のない」という取引以外は客側からの要請がない限り勧誘を禁止する(不招請勧誘の禁止)規制についても、導入が決まっていて、それに伴い倍率が引き下げられ、FX取引の倍率規制同様に、出来高が減少することが危惧されている。
証拠金制度については、計算方法について、過去の価格帯(東京穀物商品取引所、中部商品取引所、関西商品取引所)や価格変動(東京工業品取引所)をもとに、証拠金額を建玉1枚あたりで計算しているが、(株)日本商品清算機構は、同社が価格変動を基準に証拠金額計算の基礎となる値(変数)を決定する方法(SPAN)を2011年1月の導入を決定し準備している。
取引においては、一定の決まった月までに、現物引渡し(先渡し契約を伴うもの)または反対売買(転売・買戻し)で決済することが約束されている商品を売買する。この決められた月を、「限月(げんげつ)」といい、取引の単位を「枚」という。たとえば金においては1kgが取引単位となっている(2007年2月現在)。現物を受け渡す最小単位も取引単位と同様に設定しているものが多いが、なかには2枚や5枚を単位とするものもある。売買をするにあたっては取引所によって定められた一定額の証拠金を納めなければならない。この額は契約商品全体の額(「丸代金」という)の 3〜10%くらいである。すなわち10〜30倍のレバレッジがかかっているのがこの取引の特徴である。買いまたは売りをしたまま、未決済(現物引渡しや反対売買が行われていない状態)になっている契約を「建玉(たてぎょく)」という。建玉に発生する損益を「値洗い」といい、ポジション(口座にある建玉全体の状態)にたいして一定以上の値洗い損がでれば、追加の証拠金を納めなければならない。これを取引追証拠金(とりひきおいしょうこきん・おいしょう)という。証拠金が納付できない場合は、そこで強制決済となる。証拠金は、納会日(最終決済日)が近づいてきたときや相場が荒れたときにも、追加を要求される。前者を定時増証拠金(ていじまししょうこきん・ていじまし)、後者を臨時増証拠金(りんじまししょうこきん・りんまし)という。
このようにして、商品が上がると思えば買い建玉をし、下がると思えば売り建玉をするのが、商品先物取引(商品相場)における典型的な投機的取引であるが(いわゆる片建取引)、このほかに、同一商品異市場の値段差が縮小するのを狙う取引(アービトラージ)や、類似商品の値段の差・比率に着目する取引(ストラドル)、限月間の値段差に着目する取引、順鞘(限月が近づくにつれ値段が下がっている状態)のときの鞘すべり取り(ローリング)、逆鞘(限月が近づくにつれ値段が上がっている状態)のときの鞘出世取り、順鞘のとき期近(決済の早い限月)を買い期先(決済の遅い限月)を売って、期近を現受け(現物を引き取ること)して期先に売りつなぐことで、差額を獲得する取引などがあり、これらを総称して鞘取りという(もともとは投機的取引で値段差を狙う全ての取引を鞘取りといった)。日本では困難であるが、これらにさらにオプション取引を絡ませて、いっそう複雑なポジションを構成することもできる。
なお、毎日の売買量を出来高(できだか・売りと買いが成立したものを1枚と数える)といい、ある時点での未決済の建玉の量を取組高(とりくみだか・売りと買いが取り組んだ状態を1枚と数える)という。これとは別に売買高という言葉を使用する場合があって、売りと買いでそれぞれ1枚と数え出来高を2倍に数えるのがそれだという。ただし日本経済新聞の商品市場の欄の説明では出来高のことを売買高といい、取組高のことをたんに建玉といい、帳入値段または帳入指数のことを清算値と称しているから注意を要する。
日本では東京工業品取引所、東京穀物商品取引所など4つの商品取引所で商品先物取引が行われている。欧米と同様の清算制度や電子取引端末の導入を契機に、時差の面で米国市場・欧州市場を補完するアジアの中核市場を目指す。
取引形態は、株式市場と同様のザラバ方式と、1日数回の取引節ごとに注文を突き合わせる板寄せ方式に分かれている。殆どの市場で注文処理はコンピュータシステムによるシステム取引が行われているが、中部大阪商品取引所大阪取引センターにおいては、2007年8月31日まで伝統的なハンドサインによる手振り板寄せ売買が行われていた。(これが日本における手振りによる最後の取引である。)板寄せ方式は、競売買(オークション)方式でかつ、ザラバ方式と異なり、会員別の手口が立会中でも場電又は情報ベンダーにより把握でき、取引参加者別の総取組高表および取引高表の公開、自己玉の取組高表も公開されるため、ザラバ方式のような匿名性を利用する外資系委託者の見せ板問題など、証券取引のようなザラバ方式と比較して価格構成に不正な方法(後述の価格形成に影響を与えない向かい玉問題とは別次元の話である)が入りにくく、さらに、証券取引所の競売買(オークション)方式である板寄せと異なり売り手と買い手の注文枚数が完全一致したところで約定値段となるため世界中の取引所取引の中で最も価格の透明性が高い(ガラス張り)取引だと言える。よって、日本独自の取引方法で世界に誇れる取引方法だと言える。その他、期近など流動性の低い取引をするときには、特定の時間に注文が集まる板寄せ方式のほうがザラバ方式より約定させやすい特性がある。(ザラバ方式より板寄せのほうがスリッページが発生しにくい)
板寄せにおいては、市場で売買が成立した後一定時間内の間、取引員が当該値段で売り買い同枚数の取引が成立したとして、後から取引所に報告することが認められている。(中部商品取引所を除く)これをバイカイ付け出しといい(またバイカイを振るともいう)、投資家の中には特殊サービスとして歓迎する向きもあるが、不正の温床であるとして問題視する意見もある。また、取引所と取引員は、日々値洗いに応じて、場勘とよばれる金銭のやりとりをしなければならず、この場勘定等を翌営業日正午までに決済(T+1)を行われないと違約となって(T+2であったが、違約リスク軽減のため、平成15年6月6日に場勘定等決済期限の短縮化(T+1)実施)取引停止となるので、取引員は場勘のやり取りを嫌う傾向が強い。(かつては、取引員が取引所ごとに個別に清算していたが、平成17年5月2日以降の取引については清算参加者を委託者の代理人として委託者と日本商品清算機構が清算しているため清算参加者と日本商品清算機構の間ではネッティング(相殺)により決済資金の負担が必要最低限度で済むこととなるだけでなく、取引証拠金の預託先も、日本商品清算機構が一手に担うこととなるため、複数取引所において取引を行う清算参加者にあっては、取引証拠金の一元的な預託が可能となるため、事務及び資金効率化が図られた)このため、取引員は取引所に対し中立のポジションをとる傾向があり、当然一般の顧客とは反対のポジションをとる傾向となる。これを向かい玉といい(市場を全く通さない場合は呑み玉という不正行為である)、顧客に対する出金遅延の原因となりやすい。向かい玉については、運用方法に問題がある場合において最高裁は、平成21年 7月16日と平成21年12月18日に利益相反取引について、可能性があることを受託する前にきちんと説明し自己玉を建てたのちにきちんと事後通知をしないと商品取引員は、委託者に対して賠償責任を負うと判示し、平成4年2月18日には、「客殺し商法」として、詐欺罪が適用出来ると判示している。なお、ザラバにおいても、注文を貯めたり、指値注文や成行注文をうまく運用することにより、東京工業品取引所の旧システム(NTTデータ製)売買下においても、値段の完全一致はできないが、委託玉と自己玉のそれぞれの同じ値段か値段の近いところで約定させる類似した取引が行われていた。また、指値ではなく成行注文の場合、値段の完全一致が出来る板合わせ(証券取引所における板寄せ取引と同じ仕組み)に取引を誘導することも行われていた。よって、問題の本質は、ザラバがよく、板寄せが悪いのではなく、取引員の営業姿勢によるものである。